ニュースの概要
イベント企画や施設運営を手がけるホットスケープが、東京・千代田区の飯野ビルディングに、カフェとイベントスペースを兼ねた「cafe E-SCAPE」を今冬オープンする。昼間はオフィスで働く人が気軽に立ち寄れるカフェとして営業し、夜は企業の催しや交流会に使える会場へ姿を変える。運営側は、利用目的を細かく決めすぎないことを重視している。座り心地のよい椅子や電源といった、長く居ても疲れにくい環境づくりに力を入れる方針だ。日常の居場所と非日常のイベントを一つの空間で両立させる、新しい形のサードプレイス(=自宅と職場の間にある第三の居場所)として注目を集めそうだ。
引用元: 東京・千代田区にカフェとイベントを融合した新たなサードプレイス(イベスル)
分析・見解
空いている時間帯を使い切る、昼夜二面の設計
イベント会場の最大の弱点は、稼働率にある。多くの貸し会議室やイベントホールは、催しのない日中や平日の空き枠をどう埋めるかに頭を悩ませてきた。一方、カフェは昼の客足は強くても、夕方以降は急に静かになる店が多い。
cafe E-SCAPEは、この二つの弱点を組み合わせて消す発想だと読める。昼のカフェ営業で日常的な来店客と認知を稼ぎ、夜のイベント貸しで単価の高い収益を得る。固定費である家賃を、一日のうちに二度働かせる形だ。
「目的を決めない」ことが長居につながる
今回の計画で興味深いのは、利用目的を限定しすぎない点である。カフェなら飲食、貸会議室なら会議と、多くの空間は使い方があらかじめ決まっている。目的が決まった空間は分かりやすい反面、その目的がない人は入りにくい。
目的をあえてぼかすと、ひとりで作業する人、同僚と軽く打ち合わせる人、夜の交流会に参加する人が同じ場所に集まる。電源や快適な椅子は、その幅広い使い方を支える土台になる。設備が貧弱なカフェは回転率を上げる代わりに、居心地を犠牲にしている。長居を許す設計は、収益の考え方を転換する選択でもある。
オフィスビル内という立地が持つ強み
飯野ビルディングのようなオフィスビルの中にある店は、通りすがりの客に頼らなくても、ビルで働く人という安定した母集団を持てる。昼休みや仕事帰りの動線上にあり、天候にも左右されにくい。
さらに、夜のイベントは、同じビルの入居企業が自社の懇親会や取引先向けの催しに使いやすい。移動の手間がなく、普段から顔なじみの場所で開けるので、参加の心理的な壁が低い。社外のホテル宴会場を借りるほど大がかりでもなく、会議室では味気ない。その中間の需要を狙っている。
似た試みとの違いと、残る課題
昼はコワーキング、夜はバーという二面運営は、すでに各地で見られる。違いが出るのは、切り替えのなめらかさだ。机や照明を入れ替える作業に時間と人手がかかると、夜の準備で昼の営業を早く閉めざるをえなくなる。家具を軽くして動かしやすくする、収納を壁面に集約するなど、切り替えを前提にした設計が成否を分けるだろう。
もう一つの課題は、雰囲気の両立である。昼に静かに作業したい人と、夜ににぎやかに交流したい人では、求める空気が異なる。二つの顔を無理なく共存させる運営の腕が試される。
ビジネスへの影響
自社の交流の場を、外部の空間で補う選択肢
社内イベントや取引先との懇親会を開くとき、専用の会場を借りると費用も手間も大きい。cafe E-SCAPEのような昼夜兼用の空間が増えれば、小規模で気軽な集まりを、低い負担で開く選択肢が広がる。たとえば、新入社員の歓迎会、部署をまたいだ勉強会、顧客向けの小さなセミナーなどだ。
総務や人事の担当者は、会場選びの基準を見直す余地がある。収容人数や料金だけでなく、普段から人が行き来する場所かどうかも考えたい。日常的に使われている空間は、イベント当日も肩の力が抜け、会話が生まれやすい。
場の運営側が学べる、設備投資の考え方
施設を運営する側にとって、今回の事例は設備投資の優先順位を考える材料になる。電源や椅子といった地味な設備は、目立たないが滞在時間を左右する。滞在時間が伸びれば、追加の注文や次回の来店につながる。
導入を検討するなら、まず自社の施設の時間帯別稼働率を洗い出すとよい。空いている時間にどんな需要があるかを調べ、その需要に合う設備を足す。いきなり大規模改装をするのではなく、電源の増設や可動式の家具から始めれば、小さな投資で効果を確かめられる。