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旧プールがローラーリンクに生まれ変わる フランスの再生計画から学ぶ居場所づくりのヒント

旧プールがローラーリンクに生まれ変わる フランスの再生計画から学ぶ居場所づくりのヒント

旧プールがローラーリンクに生まれ変わる フランスの再生計画から学ぶ居場所づくりのヒント

ニュースの概要

パリ北東のセーヌ=サン=ドニ県にある旧マルヴィル・プールが、スポーツと文化と交流を一か所で味わえる「サードプレイス」(=家でも職場でもない居場所)へ転換される計画が進んでいる。この建物は2026年の「文化遺産宝くじ」の支援対象に選ばれた。再生を担うのは、地元のローラースケートクラブ「Flaneurz Roller Skating Club」である。かつて水をたたえていた2つの水槽にはローラースケート用のリンクをつくり、都市文化やアートに関わる活動の場も組み合わせる構想だという。使われなくなった公共施設を、住民が集う場所として再び動かす試みとして注目される。

引用元: 旧プールをローラースケート中心のサードプレイスへ再生、フランスの地域文化拠点計画(Sortiraparis.com)

分析・見解

水槽の深さと傾斜が、そのままリンクの遊び場になる

旧プールを滑る場所に変える発想は、実は突飛ではない。プールの底は平らで広く、まわりを壁が囲んでいる。深い側と浅い側をつなぐ傾斜もある。ローラースケートやスケートボードの世界では、水を抜いたプールは昔から憧れの舞台だった。1970年代のカリフォルニアでは、干ばつで空になった個人宅のプールに若者が入り込み、壁の曲面を使って技を磨いたと言われる。今回の計画は、そうした非公式の遊びの文化を、地域が認める正式な場所へ引き上げる試みと見ることができる。

構造の面でも利点は大きい。プールの建物は水の重さに耐えるよう頑丈につくられており、床や壁に余裕がある。大きな屋根と高い天井もあるため、雨の多い季節でも使える。新築なら大きな費用がかかる部分を、すでにある建物の骨組みが肩代わりしてくれる。

文化遺産宝くじが後押しする、建物を使い続ける価値

「ロト・デュ・パトリモワンヌ」は2018年に始まった仕組みである。宝くじの収益の一部を、傷んだ歴史的な建物の修復に回す。有名な城や教会だけでなく、地域に根ざした身近な建物も対象になる点が特徴だ。

ここで見落とせないのは、建物を飾って眺めるのではなく、使いながら残す考え方が評価されていることだ。マルヴィルの旧プールも、20世紀の公共施設として住民の記憶を抱えている。壊して更地にするより、用途を変えて受け継ぐほうが、思い出も町の風景も残る。修復の資金が出ることで、民間クラブが背負う初期費用の壁も下がる。

公共プールの老朽化と、民間クラブが運営を担う流れ

欧州では、1960年代から70年代に数多く建てられた公共プールが、設備の老朽化と光熱費の高騰で閉鎖や縮小に向かっている。水を温め、循環させ、浄化し続ける費用は重い。使われなくなった建物をクライミング施設や劇場、住民運営の交流拠点に変える動きは、各地で見られる。

今回の担い手が、自治体ではなくスケートクラブである点も興味深い。自治体がすべてを抱えると、予算が厳しい年に施設ごと止まりやすい。一方、好きで集まった人たちが運営の中心にいれば、利用者がそのまま支え手になる。建物は公共の資産として守り、中身の運営は熱量のある団体が担う。この役割分担は、今後の再生事業の一つの型になりうる。

ローラースケートは、初心者と経験者が同じ床で混ざる

競技によって、人の交わりやすさは大きく違う。ローラースケートは、音楽に合わせて輪になって滑る場面が多い。上手な人も初心者も、同じ床で同時に動く。見て学ぶ、転んで笑い合う、靴や防具を貸し借りする。会話が始まるきっかけが、自然に生まれやすい。ここにアートや都市文化の催しを重ねれば、スポーツに関心のない人も入り口を見つけられる。

ただし課題もある。水槽は音がよく響くため、近隣への騒音対策が欠かせない。転倒による事故を防ぐ床材や監督体制、スケート靴の保管場所も要る。理想の絵を描くだけでなく、日々の運営の細部を詰められるかどうかが、成否を分けるだろう。

ビジネスへの影響

使われていない大型施設を、体験の場に変える発想

倉庫、閉店した店舗、古い工場、使われなくなった体育館。こうした遊休施設を持つ企業や自治体にとって、今回の事例は参考になる。ポイントは、建物の特徴をなくさず、むしろ売りにすることだ。プールの水槽という形が、そのままローラーリンクの個性になる。内装を大きく変えない分、改修費も抑えやすい。

まずは週末だけの試験開催から始めるとよい。数回開いて、来場者の年齢層や滞在時間、飲食の利用状況を確かめる。本格的な改修は、その結果を見てからで遅くない。

専門クラブと組む運営モデルの作り方

運営を自前で抱え込まず、熱量のある専門団体と組む方法もある。所有者は場所と信用を提供し、団体は企画と指導を担う。収入源は、場所の貸し出し、レッスン、道具のレンタル、カフェなど複数に分けると安定しやすい。

補助金や支援制度は、改修費に使える場合が多い。一方、運営費は別に考える必要がある。契約では、費用の負担先、事故が起きたときの責任、利用時間の取り決めを、最初に文書で明確にしておきたい。

始める前に確認したい安全、音、採算の三点

第一に安全である。床材、転倒時の防具、救急対応の手順を整える。保険の範囲も確認しておく。第二に音である。反響しやすい空間では、吸音材の設置や営業時間の工夫が要る。近隣住民への事前説明も、開業後の苦情を減らす。

第三に採算である。来場者の数だけでなく、通い続ける人の割合を指標にするとよい。居場所づくりは、一度の話題より、繰り返し訪れる人の数で価値が決まる。小さく始めて、常連が育つかを確かめる姿勢が現実的である。

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